新型コロナウイルスの感染が広がっている中国で、都市が閉鎖されたり、工場の操業が止まったりしたことで、大気汚染が大きく改善したことが、欧米の衛星データからわかった。汚染物質である二酸化窒素の濃度が最大3割減り、2008年のリーマン・ショック後の減少幅を超えたといい、米航空宇宙局(NASA)の研究者は「これほど広い範囲で劇的に減ったのを見たのは初めて」と驚いている。
欧州宇宙機関(ESA)の大気観測衛星「センチネル5」のデータなどによると、武漢や北京、上海など中国東部と中部の今年2月後半の二酸化窒素濃度は、05~19年の平均より10~30%少なかった。
新型コロナウイルスの感染拡大で武漢が1月23日に閉鎖され、交通機関や地元企業が相次いで操業を止めた。これにより、工場や発電所、自動車などから排出される二酸化窒素が大きく減ったとみられる。
二酸化窒素の濃度は、08年の北京五輪があったときも減ったが、このときは北京周辺だけで、今回のように広範囲で減少したのは例がないという。NASAで大気汚染を研究している科学者は「今年は春節(旧正月)が終わっても減少が続いている」と話した。(小川詩織)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル